牛肉戒厳令

 

叙々苑での焼肉バンザイ。

お肉大好き人間の私ですが。

 私は小さい頃からお肉大好き人間だった。好き嫌いが激しかったので野菜が全く喉を通らなくても、お肉だけはペロリと食べる子供だったらしい。まあそんな子は今でも珍しくないんじゃないかなと思う。

 さて、かなりあり得ない事に…つい近年まで我が家では牛肉を食べることが禁止されていた。他に周囲で例を聞いたことがないので、折角なら書いてみよう。

 タイトルは大好きなALI PROJECTのアルバム「A級戒厳令」のもじり。

家族ぐるみで牛肉禁止に

 2002年当時、BSE牛海綿状脳症)という病気がとても話題になっていた。BSEってなに?という方のために、今話題のBingChatさんに説明してもらおう。

BSEについて教えます。BSEは、牛の脳の組織がスポンジ状になり、神経症状を示す感染症です¹²。BSEは、BSEプリオンと呼ばれる異常なタンパク質によって引き起こされます³⁴。
BSEに感染した牛は、牛肉や内臓などの食肉に加工されると、人にも感染する可能性があります⁵。人に感染すると、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病vCJD)という致死的な脳病になると考えられています⁵。BSEの発生を防ぐためには、BSEに感染した牛の脳や脊髄などの特定危険部位SRM)を食肉から除去することが重要です¹⁴。また、BSEの検査や追跡システムも整備されています¹³。
BSEは、日本では2001年に初めて発見されました²。以来、国内でのBSEの発生は減少傾向にあります¹。
BSEは、牛の健康と人の食の安全に深く関わる問題です。BSEに関する正しい知識を持ち、適切な対策をとることが必要です。”

ソース: Bing との会話 2023/2/17
(1) 牛海綿状脳症BSE)について|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/bse/index.html アクセス日時 2023/2/17.
(2) BSE問題 - Wikipediahttps://ja.wikipedia.org/wiki/BSE%E5%95%8F%E9%A1%8C アクセス日時 2023/2/17.
(3) BSEについて | アメリカン・ビーフの安全性について | 安全性に .... https://www.americanmeat.jp/trd/safety/beef/bse.html アクセス日時 2023/2/17.
(4) 牛海綿状脳症BSE)とは?|「食品衛生の窓」東京都福祉 .... https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/niku/bse/bse.html アクセス日時 2023/2/17.
(5) 「牛海綿状脳症BSE)と変異型クロイツフェルト・ヤコブ病 .... https://www.fsc.go.jp/sonota/faq_bse-tori.html アクセス日時 2023/2/17.

 そんなわけで、そもそも食べないことで感染する可能性をなくしてしまおうということだったらしい。
 両親に上記の内容をものすごい迫力で力説されたものだから、幼すぎて何もわからないのに仕方なく諦めて豚と鶏だけを食べることにした。
 他の人がいる前でも、選択肢があるときは必ず他の肉を頼み、牛肉しかないときは断ってきた。これを12歳まで従順に続けていたのである。

監視の目をかいくぐって

 さて、時は流れ私は中学1年生になった。BSE問題はとっくに収拾がついていた頃なのに、我が家ではまだ牛肉を食べることが許されなかった。

 もはや宗教。

 10年ほど牛肉を避け続ける生活を家族でしていると、慣れてしまってもはや何の違和感も感じなくなっていた。

 そんなある日、運動会の打ち上げでクラス全員で牛角に行くことに決まった。当然焼肉店なんて牛肉ばっかりだから、人生で初めて。ついでに同年代と親の同伴なしに外食するのも初めてという初々しい状態で参加することになった。

 店内は牛肉を焼いた煙で煙っていて、クラスのみんなは誰一人臆することなく牛肉を食べていた。私1人だけが緊張して、ぼんやりしていた。だってメニューを見ても、カルビやタン、ホルモンなんてどこの何の言葉だかもわからない状態なんだから仕方ない。

 「どしたの?お腹空いてない感じ?」
 あまりに遠い目をしていたのか、周囲に心配されてしまったことを覚えている。

 戸惑った挙句、手慣れている周囲に任せて注文してもらった。しばらくすると、牛肉が出され、網の上で焼き上がり…焼けた肉を取り上げるタイミングすらわからなかったので友人に一切れ分けてもらった。
 何も悪くないのに、罪の意識を感じながら恐る恐る牛肉を口に入れると、豚より柔らかくて、ほどよく脂が甘くて。未知の旨味に感動した。文明開化で牛すきを初めて口にした人って、きっとこんな気分だったんだろうな。
 周りの子はこんなものを今まで食べてきたのか、なんてことだ。

 その後は嬉しさのあまり食べ過ぎて、お腹がとてつもなく膨らんで、制服のスカートのホックがバツっとはち切れてしまった状態で帰宅した。何を食べてきたかなんて、何も言わずに。
※実は我が家は焼肉・中華なども禁止だったけど、それはまた別の機会に書く予定。

 そしてその後は味を占めて、外食やクラス・部活の打ち上げ、合宿なんかでは人一倍牛肉を食べていた。周囲の子が食べきれない分は全部貰った。自分でお肉を買って家で焼くことなんて到底できないけど、さすがに親でも私を解剖しない限り何を食べてきたかなんて完全にわからない。外で何を食べようと自分の自由なのだということに気付けたのだった。

今では自由に牛肉を食べられるけど

 そんな「禁教生活」を続けてさらに何年か経ち。両親に私から「もういいだろう」と提案してプレゼンしたことをきっかけに、我が家でもようやっと牛肉が解禁された。親も薄々察していたはずだ。
 ちなみに、私が就職した時、初任給で買った両親へのお祝いはギフトカタログで…両親は悩んだ挙句松阪牛のステーキを選んでいた。なんだ、食べたかったんじゃないか。

 独り立ちしたいま、牛肉は自由に食べられるようになった。スーパーで買い出しの時に手に取ることもできる。誰にも気兼ねせず、自分の食べたいものを食べられるのは何とも嬉しい。
 それでも幼い頃から長い間刷り込まれた習慣は、無意識にはたらく。牛肉と豚肉のどっちを買おう?という時に、豚肉を買ってしまうことがしばしばあるのだ。どうしても牛だと手を伸ばす時に一瞬ピタリと止まってしまう。そして走馬灯のように記憶が駆け抜けて…。

 豚肉を買う時にはそんな選択をしなくていいからか、つい気楽にそちらを手に取ってしまう。人は易きに流れるとはまさにこのこと。

 いちいち心を奮い立たせなくても、牛肉を手に取れるようにたまに自主練する日々を送っている。あ、家の外で目の前に出された牛肉は昔から何の戸惑いもなく喜んで食べますのでよろしく。